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その言葉はかなり衝撃的であった。つまり、ヴォルスターの力を渡せ。と言う事なのだ。
タク「…そんな事、できるはずないじゃないか!」
テツオ「どうしてだ?お前のDサーキットにできたのだから、俺のにできないはずはない!」
タク「それはそうかもしれない…。けど!…いずれにしろ一人で勝てるわけないじゃないか」
テツオ「俺なら勝てる!お前みたいに甘くはない!」
悟「二人とも!それは違うぞ!」
ようやく立ち直った悟。まだ尻をつきながらだが、二人の言い合いをそう止めた。
悟「…しかし、二人の言っている事もまた正しい…。難しいけど、片方だけが強いだけでも、協力しなければできないこともある。…違うかな」
テツオ「協力し合え…という事か…」
タク「でも…どうすればいいのか…」
ヴォル「できる!方法はある!」
Dサーキットを通じ、ヴォルスターの声が聞こえてきた。
タク「…どうすればいいの?ヴォルスター」
ヴォル「方法はある…その前に…テツオ君を出してくれ」
そう言われて、タクはDサーキットをテツオの前に差し出す。
テツオ「…俺なら…ここにいる」
ヴォル「たしかに私だけの力では勝つ事はできない。力を合わせれば勝つ事はできるだろう。…この敵達のように」
ヴォルスターはなおも反撃できないでいた。空から目の前から、攻撃を受けつづけ、なかなか近づけない。
そして、一撃が足元を襲った瞬間、ついにヴォルスターは倒れこんでしまう。タクたちのいるほんの少し手前である。
ヴォル「…もし、協力してくれるのならば…約束してほしい。『勝つ』事だけでなく、『みんなを助ける』事も考えてほしい…」
ヴォルスターは目の前にいるテツオ直接に語りかけた。相当なダメージを受けているのか、言葉も途切れ途切れである。
テツオ「わかった。俺だって、ナオトを助けたい」
ヴォル「それだけでもいい…ありがとう。君のDサーキットを高く掲げてくれ」
懐の中からDサーキットを取り出し、言われたとおりにそれを思いきり高く掲げた。
テツオ「…これでいいのか!?」
その時、ヴォルスターの額にあるジュエルユニットが、青白い光を放つ。
悟「!!いかん!」
カトブレパスがヴォルスターを狙って左肩のキャノンを構えていた。射線上には自分たちもいる!
バインダー「ムッ!」
バインダーもうろたえていた。ヴォルスターのみを攻撃するように仕向けたのが、かえって仇となった。
タク「ヴォルスター!はやく!」
ヴォル「む…うぅ…」
青白い光はそのままジュエルユニットから飛び出し、ゆっくりとテツオのDサーキットに近づいて…その中へと吸い込まれるように消えていく。
直後、カトブレパスの必殺の一撃が放たれた!
悟「うわっ!!」
バインダー「くっ…」
キャノン砲の弾は的確にヴォルスターを捉え、そして大爆発!
地面も吹き飛び、タク達も巻き込まれた…。
いや!そうではない!
何かが盾となって、その攻撃を防いだのだ。
粉塵が舞い上がり、視界が遮られていた。
ほんの少しして遮る者も無くなった頃、それがなんだったのかをようやく見る事ができた。
銀色の鎧、翼、真っ赤な眼、高々と貫き立っている4本の角、クラウンの形をしたジュエルユニット、右手に持つ巨大なランス…。

ナイトドラグーン…テツオのDR。その姿は雪の銀色の中に良く映えた。
テツオ「…まさか…」
タク「やった!!」
バインダー「むぅ…こんな力を持っていたか…」
みんなその出来事には驚いた。まさか、もう一つの”光”が現れようとは!
先に立ちあがったナイトドラグーンが、まだ倒れたままのヴォルスターの手を取り、立ち上げる。
二人の勇者対、二人の邪悪。それが、湾岸の広大な土地に対峙する。
バインダーも戸惑っていた。まさかこんな事になろうとは。
その腕の中で意識を微かに取り戻したナオトは、その状況を見て呟いた。
ナオト「…負けないぞ、テツオ…」
テツオ「…負けないぞ、ナオト…」
タク「行け!ヴォルスター!」
ヴォル「オォッ!!」
闘いは第二ラウンドへ突入した!2対2.今度はやられっぱなしとはいかない!!
先に飛び出したのはヴォルスター、ナイトドラグーンのチーム!続いてツヴァイとカトブレパスが突き進む!
ヴォル「むん!!」
ヴォルスターがツヴァイと激突する。伸びてくる手の攻撃をかわし、懐へと飛びこむと、そのまま抱えて持ち上げ、投げ落とす!
カトブレパスとの接触の直前、手に持つランスで貫こうとする。が、敵の動きが一瞬素早く空へ飛びあがり、攻撃は空を切るかたちとなった。
テツオ「飛べ!絶対に逃がすな!」
テツオの命令がナイトドラグーンに届いた!
閉じていた翼を広げて、ナイトドラグーンは飛ぶ。そのスピードはカトブレパスに劣らず、一度かわされた攻撃を今度はその足めがけてぶつける!
タク「やった!!」
ナオト「やるなぁ…テツオ…」
失速したカトブレパスだが、致命的なダメージだったとは言えず、姿勢を制御した後に右肩ミサイルの乱射が始まる。
テツオ「撃ち落せ!一つも残すな!」
テツオの指示は的確である。ナイトドラグーンは口の部分をがばっと開き、その中から虹色の光線…レーザーブレスを放つ。
次々射落とされるミサイルだが、爆煙がナイトドラグーンとカトブレパスを包んで見えなくなってしまう。
ナオト「センサー起動。敵を撃ち落せ」
カトブレパスの頭部センサーが青く光り、煙の中に紛れたナイトドラグーンを照準に捉える。
キャノン砲を構えようとした時、照準から相手が消えた!
ナオト「どうした?カトブレパス」
テツオ「センサーの精度なら、こっちも負けてない」
ナイトドラグーンはすでに爆煙の中から抜け出し、さらに高空からカトブレパス目掛けて急降下していたのだ!
これにはさすがのカトブレパスも、不意を突かれたかたちとなった。
頭部センサー部が破壊され、バランスを失って落下してしまう。
そのまま海へと着水。沈んでいくカトブレパスを、ゆっくりと着地して見守るナイトドラグーン。
ヴォルスターはすでに7回目の投げの体勢になっていた。さすがにここまでやられるとツヴァイも反抗する事もなく、成すがままの状態になっている。
すでにジュエルユニットが赤く輝いていた。それもそのはず、ナイトドラグーンの体を維持する為にいつもの倍のエネルギーを消費しているのだ。
もはや時間がないのである。
7度目の投げも決まり、ツヴァイは頭から大地に落下。ゆらゆらと立ちあがるが、先ほどまでの機敏さはもはやかけらもない。
チャンス!拳に光のエネルギーを集中し、ツヴァイの腹部…アルケミー・クリエーションのある場所へ一撃を加えた!
ズンッ!!低い音とともにツヴァイの腹に穴が開いた。
勢いで倒れこむバインダー・ツヴァイ。完全に停止したわけではないが、もはや全身ボロボロになっていて、反撃してきそうもない。
形勢逆転。さしものバインダーもこれ以上の戦闘は不利だと悟る。
街灯の上から地面に下り、抱えていたナオトを解放する。
タク「ナオトくん!?」
バインダー「…時間を稼いでおけ」
ナオト「ハイル…」
静かに答えるナオト。しかし、その顔からは生気が感じられない。
自分のDRがここまで痛めつけられた上に、バインダーに見限られたも同然の言葉を浴びせかけられた。
屈辱感…以前の彼からでは考えられない感情である。
それほどまでに催眠の効果は高かったのだ。
突然、ツヴァイが立ちあがる。再び構えるヴォルスターとナイトドラグーン。
しかし、その頭の先からどろどろに溶けだし、やがて液状化したツヴァイは螺旋状の槍のような姿となって、空の彼方へ去って行った。
その先端にはバインダーが乗って。このまま立ち去ろうと言うのか?
ヴォル「待て!」
巨大な槍を捕まえようと走るヴォルスター。だが、海の手前まで来た時に突如何者かに片足を掴まれて海中へと引きずり込まれる。
タク「どうしたの!?ヴォルスター!」
ヴォル「海底に…何かがいる!」
ナオト「そのまま海から出すな!カトブレパス!」
ナイトドラグーンが助けようとするも空しく、ヴォルスターは海中へと姿を消した。

海中にいたのはカトブレパスである。巨大な外装を脱ぎ捨て、本来の軽装型の姿になってはいるが、海の中ではどちらも同じ条件だ。
ヴォルスターの左腕に、マルチスクリーンに変わってウイングエッジが装着される。
ヴォル「いいタイミングだ!」
足にまとわりついたのは、カトブレパスの右手から伸びた鞭だった。
ウイングエッジで叩き切り、逆にそれを掴んで引っ張り、振り回し出した!
地上に残されたナオトに近づくタク達。しかし、ナオトはじりじりと後退し、誰も近づけさせない。
タク「ナオトくん!ブレスレッドを捨てるんだ!」
ナオト「いやだ。これだけが俺とバインダー様を繋いでくれる絆なんだ!」
悟「そんな忌わしい絆なんか、そんなものは君には必要ない!」
ナオト「必要だ!このままでは近い将来、地球は滅び去る。それを救えるのはバインダー様しかいない!そう教えられた!」
悟「違う!地球を救うのは何者でもない!」
ナオト「ヴォルスターが救うとでも言うのか!?」
タク「地球を救うのは、僕ら…人間自身!僕達の力が未来を守れるんだ!」
ナオト「そんな力なんか、あるわけないじゃないか!」
海面に渦潮が現れた。ヴォルスターがカトブレパスを振り回しているせいである。波が高くなり、その公園まで冷たい海水が入ってくる。
タク「そうだ。力なんてない。でも、未来を信じる力なら持っている!」
ナオト「?…未来を…信じる力?」
悟「希望だ!希望を持ちつづけていれば、それは必ず叶う!」
タク「誰かに助けてもらおうなんて思っちゃ駄目だ!自分から代えていこうと思えば、滅びる未来なんて絶対変えられる!」
ナオト「…だめだ。力が無ければ…希望だけじゃ…。来い!カトブレパス!」
ナオトの声がカトブレパスを呼ぶ。振り回されている鞭を自ら切り離し、渦の中心から飛び上がり、着地。
テツオ「…ナオト!俺と最後の勝負だ!」
ナオト「くっ…」
すでにカトブレパスのエネルギーは尽きかけていた。壊れた頭部から覗くジュエルユニットが赤く点滅してその危険を知らせる。
逆にナイトドラグーンはまだまだ闘えるといった勢いである。
テツオ「どうだ?バインダーのやつにその力があるのなら、あんなDRでも俺には勝てるはずだ!お前が負けたらそこまでだと言う事だ!」
ナオト「…わかった。バインダー様が与えてくれた力だ!カトブレパスが負けるわけがない!」
ナイトドラグーンとカトブレパスが向かい合う。
ランスを大地に突き立て、背中の二本の尻尾…テールアンカーを射出。同じように地面に突き刺さる
何をしようというのか?
逆に、カトブレパスにもはや武器はなかった。強いて言えば、その身軽さが武器となる。装甲の弱さが仇であるが。
先に出たのはカトブレパスだ。その身軽さゆえのヒットアンドアウェイ戦法でならば勝算はある。
ナイトドラグーンの胸アーマーが上下に展開する。まるで獣が牙をむいたかのような形である。しかし、牙ではなく砲口が代わりに獲物…カトブレパスを捉えていた。
それこそが、ナイトドラグーンの最強武器…。
テツオ「スプレッドプレッシャー。発射!」
胸の砲口から真っ黒な球体が放たれる!すさまじい衝撃で、それを撃ったナイトドラグーンさえもバランスを失いかける。テールアンカーは倒れない為の支えだったのだ。
すさまじいスピードだが、カトブレパスには用意に避けられるもの…のはずが!
易々と避けたにも関わらず、進行方向を急に変えて後を追ってくる球体に掴まり、その中へと取り込まれてしまう。
重力を操作してしまう最強武器スプレッドプレッシャー。球体の内側では、その外側に向かっておよそ100G以上もの力が加えられている。
その状況はまさにスプレッド=拡散、プレッシャー=圧搾!
しかし、これだけではまだ相手を倒す事は出来ない。ランスを再び構え、黒い球体に向かって飛ぶ!
黒い球体にランスを突き刺す!重力エネルギーがそこから解放され、大爆発!
急激な熱が拡散し、猛烈な突風が地上のタク達4人を襲う!
タク「うわっ!!」
海の方へと吹き飛ばされそうになるが、悟が、タクも、テツオも、掴んで離さず、なんとか海へ落ちずに済んだ。
しかし、なにも掴むものが無かったナオトは海へと落ちかけていた。
タク「ナオトくーーーーーーーーーん!!!」
海へと落ちていったナオト…を、助けたのはヴォルスターの手だった。
ヴォル「間一髪…というのか。この少年は大丈夫だ!」
タク「ヴォルスター!」
悟「…またあいつ、良いとこ取りだな…」
突風も、球体も、カトブレパスも消え去り、後には破壊され尽くした戦場と、そこにた立つ2人の勇者。そして、少年たち…。
タク「ナオトくん!!」
気絶し、倒れたナオトの体が、ヴォルスターの手のひらから手渡される。
テツオ「早くブレすレッドを外せ!」
タク「…いや。もう、大丈夫だよ…」
ナオトは寝息を立てて静かに眠っていた。もうその顔からは狂気は感じられず、鉢巻も、ブレスレッドもどこかへと消えていた。
少なくとも、これ以上彼が不用意に傷つく事はない。そう思った…。
次の日も、雪は降り続いていた。
あの後、タクの街にある病院にナオトは入院した。
外傷等はなく、疲労と栄養不足。それと脳検査のための、たいしたことのない入院であった。
が、それでも、かつてすんでいたこの街の風景がナオトにはとても心地好かったのだ。
脳検査…それもそのはず、ナオトはあの最初の夜からの記憶がなくなっているのだ。
ブレスレッドによる催眠の暗示が解けたことで、忌わしい記憶がどこかへ行ってしまったのだろう。そう思いたいし、願わくば永遠に忘れていてもらいたい。…甘い考えかもしれないが…。
栄養不足といわれたのも、力を使ったときにほとんど消費してしまったからではないだろうか…。
いずれにしろ、そんな事はどうでも良いのだ。ナオトが無事だったのだから。
タク、テツオ、ミキ、そして悟の4人は、ナオトの病室にお邪魔していた。
ナオト「…なにも…覚えてないのが…」
タク「いいよ。思い出さない方がいい」
ミキ「そうだよ。ナオトはなんにも悪くないんだから」
ナオト「そうはいかないよ。操られていたけど、でもやった事は悪い事だから…」
タクはその言葉が嬉しかった。目の前にいるのは、やはり昔通りのナオトだ。
今はそれが素直に喜べた。
テツオ「…なにニヤニヤしてるんだ?」
タク「え?いや。なんでもないよ」
悟「まぁ。後処理はこっち…というか、上のほうで上手くやってくれた。君が心配する事なんて一つもないから」
タク「だから、安心して、体を休めて」
ナオト「そうか…ありがとうございます。悟さん。ありがとう、みんな…」
ナオトのやさしげな微笑みが和やかにさせた。この笑顔を取り戻す為の”希望”の力なのだから…。
テツオ「それにしても、俺とお前との闘いも覚えていないなんてな」
ナオト「俺とテツオが?どっちが勝ったんだ?」
テツオ「覚えていないなら意味がない。それに、あれはもうデュエルじゃない。なぁ、タク?」
タク「え?あぁ。そうかな…」
ミキ「何半端な返事してるのよ?」
タク「あ!痛ってーーー…」
ミキに小突かれる。が、これが結構痛くてつい叫んでしまう。
それを見てみんなが笑った。
悟「…そうそう。それで、まだ何も決まっていないんだけど、決勝大会の3回戦以降を改めてやる事が決まりそうなんだ」
タク「本当!?」
悟「ナオト君もそれまでにちゃんと治しておいてくれよ」
ナオト「!…俺も…出て良いんですか?」
悟「当然じゃないか」
タク「そうだよ。その権利はある!」
テツオ「俺も負けないからな。絶対勝ちあがって来いよ」
ナオト「もちろん。俺も負けないからな」
二人は固く手を握り合う。
12月24日…。テツオとナオトにとっては、それは思わぬクリスマスプレゼントとなった。
喜び、微笑み、笑い…。タクはそれを守る事ができて、本当に嬉しかった。
ナオトの様子を一目見ておきたいと、ヴォルスターが窓の外にいた。誰も気づいていないようだったが、タクと目が合う。
そんなヴォルスターに、タクは微笑んで頷く。
この笑顔を守るんだ。それを再確認して…。
Fortunate Christmas visits to you.
and…
The fortunate new year comes.
and.and…
Your smiling face is eternal…
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